1970年、城みさをが57歳の時。あるきっかけで手織りを始めて間もない頃。自分の織った布にタテ糸が1本抜けていた。織物の常識に照らせば傷物。しかし、何か趣きがある、自分としては気に入っている。これを傷とみるか模様とみるか、見方次第で物の評価は
180度変わる。よし、一度常識から離れて自分の好きなようにやってみよう、どんどんキズを作ってやろう…
すべてはその発想の転換から始まりました。
単なる手織りがアートに昇華した瞬間でした。
「さをり」とは自分の感じるままに、好きに好きに織る手織りです。織りに自己を表現するというアートとしての手織りです。アートである以上、見本もなければ、ミスや失敗というものもなく制約もありません。何を何色でどんな風に織るか、すべて織り手本人に委ねられているのです。
しかし、自由である=簡単というわけではありません。我々は日頃から常識や既成概念という枠の中で生活しています。知らず知らずのうちにそれらの影響を受けて、何かに捉われていることが多いものです。その中で「自分」をありのままに表現することはある意味で難しいとさえいえるのです。 |

タテ糸一本抜けた布(下)とタテ糸たくさん抜いた布(上) |